201号室の、オオカミくん☆
「屋上への抜け穴を見つけずにバリケードを壊すなんてルール違反だ! 抜け穴を探すワクワク感を奪う気だろ!」
本当は抜け穴を知っている身としては、少し胸が痛むけど。
「だからっていきなり飛び蹴りは止めろよ。オジサンだぞ」
皇汰が苦笑いしながら抱き起こすと、葉瀬川さんは階段を見上げた。
「上から微かに、油絵の臭いがしたんだよ」
「油絵?」
「葵は油絵で有名な子だから。海外で、だけど」
「あ、その、すみません。急に蹴っちゃって」
屋上が見つかると焦ってたけど、勝手に葉瀬川さんを悪い奴と決めたら失礼だった。
「いやいや、てか君たち知り合いだったんだねぇ」
紳士の鏡みたいに笑う葉瀬川さんは全く怒っていなかった。