201号室の、オオカミくん☆
「無理よ! 私、弁当作れないし自炊はほぼ皇汰に頼ってるし!」
「鮭とね、シーチキンマヨとね、明太子のオニギリがいいなー」
るんるんと鼻唄を歌う葵は、全然私の話を聞きやがらない。
それどころか大きなヘッドフォンを被り、私の声をシャットアウトしてしまった。
「……食べたいなー。俺、あんま手作りの物って食べたことないし……」
ちょっと弱々しい声でそう言われてしまえば、私の良心がチクチクと痛み出す。
「結愛のオニギリ、食べてみたいなー……」
ごり押しでそう言われてしまえば、もう腹をくくるしかない。
仕方なく、鍵をポケットに仕舞ったが、気持ちは憂鬱だ。
「家事と勉強と料理は苦手なのに」
じゃあ何が得意かと言われたら、それはそれで返答に困るけど。