201号室の、オオカミくん☆
ごっくんと大きく喉を鳴らすと、葵はうずうずと体を動かす。
「ちょっとだけ、絵描いてもいい? 今描きたい」
「いーよ。明日の舞は大丈夫?」
「もちろん」
いそいそと葵が画材を取りに消えると、途端に皇汰と二人きりの沈黙が重くなる。
「えっと、明日だねぇ。岸六田先生どうするのかな?」
「お前さ」
皇汰はパンを一口かじりながら、私を見て口を尖らせる。
不満げに私を強い視線で見下ろす。
「自分だけ与えてばっかで、ちょっとは我が儘とか言えばいいのに」
思いきりパンを噛み千切ると、紙パックのオレンジジュースで流し込む。
そのぶっきらぼうな皇汰の優しさが嬉しい。
「ドラガンさんにはね、名前の由来は知らないって嘘言ったけど」
親の事情まで話さなきゃいけないから言わなかった。