201号室の、オオカミくん☆
「下ろして……っ」
階段の途中で葵にそう告げると静かに下ろされた。
ステージでの子どもたちの太鼓が聴こえてきて、階段はお祭りから切り離された寂しい雰囲気だった。
誰も通らない階段で私は座り込む。
「結愛」
「私、我が儘なんて言えないよ」
あんな。
あんな苦しそうな皇汰の顔なんて見たくない。
これからずっと側にいても、きっと皇汰は岸六田先生を忘れない。
「私の好きな皇汰は、ちょっと子どもっぽくて、笑顔が可愛くて、何でもできる王子様で」
「ふむふむ」
葵が隣に座って、乱れた髪を撫でてくれながら話を聞いてくれた。
「だから、王子様にはお姫様がお似合いだと思ったの」
皇汰には失恋は似合わないから
ぐいぐい口説いて上手くいってほしくて。