201号室の、オオカミくん☆
慌ただしくお兄さんが消えた後、岳理さんは頭を掻いた。
「まぁ、そうだよな。大人の争いに巻き込まれるのはいつでも子どもだ。皺寄せも、傷も。――俺もそうだった」
「うん。残念だけど俺、あんまこの寺とも親とも関わりたくないなー。ずっとあの屋上に居たい」
タンクトップとジーンズという寒そうな格好で衝立から出てきた葵は、ゆっくりと岳理さんの隣に座る。
「分家とか本家とか関係ねぇ。お前が目標を持って飛び出したいんなら『親戚のお兄さん』としてお前を助けるから」
「うーん。目標かぁ。結愛と結婚とか?」
「ばっ! 真面目に考えなさいよ!」
右手を振り上げたら、葵はきゃーっと岳理さんの背中に隠れた。
冗談でも……ドキドキするじゃんか。バカ。