201号室の、オオカミくん☆

「えー。留学じゃないの? 葵くんを破格の奨学金で招きたいって大学が何校もあるんでしょ?」


「葉瀬川さんっ」

スーツ姿の葉瀬川さんがひょいっと現れると縁側の柱に倒れ込む。

「あー。疲れた疲れた。後は岳リンよろしくー。私、結愛さんを送らなきゃだから」

「はいはい。苦労さん」

面倒そうに立ち上がると、家の奥に消えていく。

ひらひらと手を振る背中は、色々と背負っていて。

――生意気に意見した私が恥ずかしくなった。



「俺、留学したいなんて思ってないよ。家に帰らないなら留学もありかなーって思って行っただけだし」


「才能あるから日本から飛び出せば楽しいかもよー」

のらりくらりした二人の会話を聞いていると、葉瀬川さんは私の帯に触れた。


「帯弛めるから自分でほどきなさい。着替えたら送るよ」

「あ、でも」
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