201号室の、オオカミくん☆


花忘荘には帰らないのに、どうしよう。

焦った私に、衝立から葉瀬川さんが顔を出す。

「――大丈夫。ちゃんと送るよ。二人にはお詫びしたいし」

どうやらお婆ちゃんの家に送ってくれる悪役になってくれるらしい。

それは助かったといそいそ着替え始め、浴衣をストンと脱ぎ終わってから気づく。


……葵にも何も言わずに家に帰るけど、どんな顔するんだろう。



「葵、あのさ」

「俺は林田先生と帰る。さっき見に来てたんだ」

「そっか。じゃあ、先に帰るね」

「うん。車まで送るよ」


途中、葵は屋台で林檎飴を買いながら、歩き出す。

何とか私も表情に出さないように歩き出す。

ぽっかり浮かぶ月が、私たちの足元を淡く灯している。
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