201号室の、オオカミくん☆

お婆ちゃんが好きなお店の、1つ600円する高級おはぎも。
なんだか今日は食べる気がしなかった。


皆で食べたおにぎりの方がいい。

朝から鳴り止まない携帯から逃げたくて、縁側に逃げ出した私の横に、お供えのように置かれたおはぎ。


砂利を蹴っ飛ばし池に投げ込むと、鯉が餌と勘違いして水飛沫を浴びながら我先に飛びついている。

それを見ながら、黙って家に帰った私を皆はどう思っているのかと思うと胸が痛い。

皇汰はあのまま帰ってなければ気がつかないかもしれない。

……葵は?


自分のカサカサした唇を指でなぞりながら、心臓がキュッとなる。

葵は葉瀬川さんに教えてもらったらどんな顔をするんだろう。

どんな……。
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