201号室の、オオカミくん☆
「私と皇汰のせい?」
小声でそう言われて首を振る。
違う。気になっているけど、それじゃない。
「私はお婆ちゃんとの約束を破りたくないだけです」
「じゃあ、もう戻らないの?」
私の決心の堅さに気づいてくれたのか念を推すように言われた。
穴が開くほど見つめられたら、深い底に沈めた気持ちが見透かされそうで慌てて視線を反らす。
「私ね、やっぱり皇汰は大切よ。多分、皇汰が一番、私を見ていて、一番私を分かってくれているわ」
皇汰から愛されてる自信からか、岸六田先生は赤く頬を染める。
「でも皇汰を一番分かってあげられている自信はない」
岸六田先生はそう悲しげに微笑む。
誰もが手に取りたいと思う美しい薔薇のような人。
だけど手に取ろうとしたら、刺で指が傷つくような。