201号室の、オオカミくん☆
恋なんて知らない。
今まで知らなかった。
恋なんか、と馬鹿にはできない。
私は皇汰を好きになったからこそ、花忘荘にやってこれた。今の私がいる。
岸六田先生にフラれた皇汰を。
私は全て全て包み込んであげられる度量も経験も魅力もない。
皇汰に振り向いて貰える――自信も。
岸六田先生は振り向いてくれないあのお兄さんを追うという。
――じゃあ私は?
こんなに岸六田先生を一途に思う皇汰の隣になんて居たくない。
でも。じゃあ、皇汰を誰が分かってあげれるの?
私の憧れの皇汰を一人になんかしたくなかった。
「結愛」
ひょいっと壁に現れたのは、長い指先。
そのままするりと飛び上がり、塀の上で手を振るのは――葵だった。