201号室の、オオカミくん☆
夜空の下、ブルーシートを広げて重箱4つを開けた。
だし巻き卵にかき揚げ。お魚にお肉に、海老に唐揚げに筑前煮。
おはぎ。赤飯。炊き込みご飯。
「これってさ、即興で作るには無理な量だよな?」
箸を配り終えた皇汰がぽつりと言う。
「分かってたんだろうね。……良いなぁ。羨ましい」
海老の殻を剥きながら葵も言う。
美味しいはずのお弁当なのに。
後から後から涙が流れてくる。
滲んで視界が見えなくて、口に運んだおはぎは、塩辛い涙の味がした。
「よしよし」
葵が頭を撫でてくれて、皇汰は背中にもたれ掛かって向こうを向いていた。
そんな二人のバラバラの優しさが嬉しくてまた泣けた。
お婆ちゃんは確かに厳しいんだけど、ちゃんと小さな頃から愛情はいっぱい感じてたから。
二人にもそれが見えたようで嬉しかった。