201号室の、オオカミくん☆
気づくのが遅すぎた。
心はとっくに葵に拐われていたのに。
初恋を手放せない私が悪いんだ。
「……勝手に心に侵入してきたくせに、勝手に居なくなるな! 馬鹿。馬鹿!」
お腹をポコポコ叩いたら、葵はちょっとだけ困った顔を浮かべて私の涙に手を伸ばす。
「結愛、可愛い……」
可愛いと、言いながら拭った私の涙に口づけする。
「その可愛い顔は、『俺へ』?」
そう言われて私はゆっくりと頷く。
「葵が……ムカつくけど……居なくなっちゃうけど……」
寂しくて胸が締め付けられてしまうけど。
「葵が好きだよ」
その言葉に涙が溢れて止まらなかった。