201号室の、オオカミくん☆
「葵!」
カンカンと梯子を登りながら呼び掛けると、パンを咥えた葵が、両手に筆を持って私を振り返る。
葵の隣に座ると、ラフまで仕上がった絵を覗き込む。
皆でおにぎりを食べた、あの花忘荘の絵だ。
葵はパンを飲み込みながら、その絵を片付けるとスケッチブックを取り出した。
「じゃあ、結愛描いていい?」
「良いけど私、食べるのは止めないからね」
「いいよ。どんな結愛も可愛いし」
素面でそんな歯の浮くような台詞を吐きながら、葵は私を描き出した。
普段のふわふわした雰囲気も好きだけど、絵を描く真剣な葵も好きだ。
だから、たこ焼きパンを食べながらも目で追いかけてしまう。
「――結愛、頬にマヨネーズついてるよ」
「げ」
慌てて取ろうとしたら、葵の胸に抱き寄せられた。
「葵っ」