201号室の、オオカミくん☆




教室から校門から帰っていく光の背中を見守る。

……黒塗りのベンツに慣れた手つきで、乗って行く。

ギリギリまで一緒にいてくれたけど、皇汰は帰って来なかった。

茜色になりつつある空を見て、彼氏を待つ乙女の気持ちに浸る。


黒髪に戻るのかな。

金髪もちょっと似合うよね。皇汰、英語は全国模試一位らしいし。



「お、桐原がまだ残っているっ。良かった」


教室のドアをガラガラと開けて喜んでいるのは担任のリンダだった。
林田と書いてリンダと呼ばれるぽっちゃり丸眼鏡の優しい先生。



「あれ? 先生、皇汰と話し合い中じゃないの?」


「ああ、楠木は俺のあと学年主任、そのあと教頭、今は校長と話し合いだ」


「……呼び出しじゃないの?」


校長と話し合いって、何の?


「まぁまぁ詳しい話はこの絵の具を三階に持っていってからな」

リンダが底の抜けた段ボールとペンキみたいな丸い缶が散乱する廊下を指差した。
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