201号室の、オオカミくん☆
薄い茶色のアーモンド・アイが見開く。
無造作に伸ばされたあちこちに跳ねた黒髪。
腕捲りされた両手には、鈴を握りしめている。
「君、毎日渡り廊下を全力疾走してる子じゃん」
シャラン
鈴を放り投げると私に駆け寄って、手を差しのべる。
ふわふわした、掴めないような笑顔。
「俺の秘密基地、見つけちゃったんだ?」
「渡り廊下って。秘密基地って」
色々聞きたい事はあったけど、取り合えず手を取って、屋上に足を踏み入れた。
「俺、君を知ってるよ。桐原結愛ちゃん」
「……まさか屋上の君に知られていたとは」
私が呆然とそう言うと、手をグーにして口元を抑えてクスクス笑う。