201号室の、オオカミくん☆
そんな素っ気ないメールでも、ちゃんと皇汰の頭の隅には、私を送るという義務は入っているらしい。
『もう帰ってる』
私もそう簡単な嘘をメールすると、また胸元に締まった。
「あんたも巨乳が好き?」
「え? えー……。どうだろ。俺、あんま肉は好きじゃないしなー」
「肉!」
そんな言い方にケラケラ笑いながら空を見上げる。
すっかり暗くなっていた。
困った。今から痴漢が出る道を帰らなければいけないのに。
「もうちょっと慰めてよ」
「うーーん。よく分からないけど、慰めたら皇汰くんを諦めちゃうの?」
ずいっと猫の目に見つめられたら答えられない。
「たった数十分で諦めれたら諦めてるよ」
でも人生はそんなに簡単じゃないらしい。
皇汰から来る着信に胸が踊るので電源を切ってしまった。
明日の朝になれば、忘れられる気持ちなら、同じアパートに侵入しようと思わなかったよ。