201号室の、オオカミくん☆
「……まぁね。私は辞めたけど」
「辞めたのに字、上手いの? 書記に推薦されるぐらい」
まさか、生徒会の時の他愛ない話を覚えててくれたとは。
嬉しいけど、ちょっと複雑。
「ふむ。ところでお主、いつまで抱っこしとくつもりじゃ?」
花忘荘アパートに到着しても、私を下ろす気配がない。
「……こいつ寄り道ばかりするから、下ろしたくねーよ。もう」
呆れてはいるが本心らしい。
でも私、皇汰のせいで寄り道ばかりしてるんだよ。
「ほう。大変じゃな。お主も」
そう言いながら、どこか他人事のように会話を終え、自転車を止めると、懐に手を入れつつ階段を上り出した。
ドラガンさんはどうやらマイペースらしい。
「ドラガンさん、引っ越しのご挨拶に詰まらない物があるんですけどー」
「酒か?」
「……するめならあるよ」
皇汰に指示して鍵を開けると、花形クッキーの入った籠を渡した。