201号室の、オオカミくん☆
泣き出したい衝動を堪えて、皇汰に笑顔で手を振った。
扉を閉じても、二階に上がる階段の音は響くし、鍵を開ける音や物音はする。
こんなに近い私と皇汰の距離は、一緒に生徒会していた時よりも遠い。
知れば知るほど、遠くなる。
カラン…… コロン……
コンコン
耳を澄ましていたのに、階段をすれ違う下駄の音はシャットアウトしていたらしい。
ドアを開けると、風呂敷を持ったドラガンさんが立っていた。
「今から富士の絵が綺麗な銭湯に行くのじゃが」
「……行きませんよ」
「だろうな。お主、変わった字を書くな。『結ぶ』の『結』だけで『ゆい』と読めるのに、何で『愛』をつけたんじゃ?」
外人って変な事まで気にするなー。
「さぁ。おばあちゃんが付けてくれた名前ですから」
意味はあるんだけどそれを伝えるとややこしくなるから止めておいた。