倦怠期です!
ニコニコしていた私の顔が、あっけにとられたような、呆然としたような表情になった。
でも私はまだ、有澤さんを見たままだ。
その有澤さんのサル顔は、すごく真面目で・・・。
まるで視線に囚われたように、有澤さんから目がそらせない。

「今夜はうちに泊まれ」
「えっ、と・・・」

有澤さんは飲んでるから、車で私を送ることはできない。
そして私たちは今、駅の近くにいて、終電までまだまだ時間は十分あって。
今電車に乗って一人で帰るか、それともこれから有澤さんちに行って・・・。

朝帰るか。

明日は土曜日だから、仕事は休み。
だから朝寝坊できる・・・って、どこで?
なんて、いくら疎い私でも、そこは想像つく!

「あのっ・・・わた、し・・・急に言われても、着替えないし。お母さんにも言ってないし」
「そこのコンビニで必要なもん買えばいいだろ」
「あ・・・・・・じゃぁ、ぅん」と返事をした私は、コクンと頷くと、そのまま俯いた。

「よし。じゃー、コンビニ行こ」と元気よく言った有澤さんは、私の手を掴むと、スタスタと歩き出したので、私もつられて歩き出す。

「すず」
「はぃ」
「俺、飲んでるけど酔ってない。だから自分が言ってること、ちゃんと分かってるからな」
「・・・うん。私も」と言うと、有澤さんは繋いでいた手を、気持ちギュッと握った。

この時見た有澤さんの横顔は、とてもカッコよくて、私よりはるかに大人びていると思った。



「歯ブラシと、メイク落とし・・あった。あと寝る時に着るシャツ・・」
「俺の貸してやる」と有澤さんは言いながら、女性用のパンツをしれっとかごに入れた。

・・・この人、慣れてる。

「他は」
「えっと・・・あ!コンタクトの保存液と、コンタクトレンズ入れ!」
「うー・・・・・・ないでー」
「あ、そう。じゃあコップに入れるからいい」
「保存液は」
「水入れる」
「それでええんか」
「一晩だったらいいんじゃない?」

と私は言いながら、メガネないから、コンタクト外したら視界がぼやけるなーと、他人事のように考えていた。

「他にも何かいるか?まだ飲むか?ケーキでも買うか?」
「ううんっ、いらない」
「じゃー支払い行ってくる」
「あ、うん・・・」

何となくレジまでついて行っちゃいけないような気がした私は、雑誌コーナーに行って立ち読みしていた。

・・・ここで待っててよかったのかな。
お金は後で払おう。
こういう状況生まれて初めてだから、私のふるまいが正しいのか、合ってるのか、全然分かんない!

私が雑誌を開いたまま、そんなことを考えていたら、頭上から「それも買うか」と有澤さんの声が聞こえた。
「いっ!?う、ううんっ」と私は言いながら、顔をブンブン横にふって否定すると、慌てて雑誌を棚に戻した。

「そか。じゃー帰ろ」
「・・・うん」

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