倦怠期です!
そして私は、コンビニのすぐ外にある公衆電話で、「今日は友だちの家に泊まる」と電話をかけた。
今日私が有澤さんと出かけていることを知らないお母さんは、「あらそう、楽しんでね」とアッサリ言った。
どうやらお母さんは、私が女友だちの家に泊まると信じて疑ってない様子だ。
なんか私・・・不良娘になったような気分。

「電話終わったか」
「あぁ、うん」
「じゃあ行こ」
「あの、有澤さん。さっきのお金、いくらだった?」
「さあ。俺のも買ったし、レシートもらってないから、俺持ちでいいよ」
「あ・・・ありがと」

私は有澤さんにニコッと微笑むと、スタスタと歩き出した。
あぁ、無理矢理笑ったから、絶対顔引きつってた!
もう私、不慣れな上に緊張してるのがバレバレで、全然ダメ・・・。

と思っていたら、有澤さんが私の手をそっと繋いできた。
それすら照れて、有澤さんの顔を見ることができない。

「雨、降りそうだな」
「そうだね」

それ以降、有澤さんちに着くまで、私たちは無言だった。
私は緊張しっぱなしだったけど、それでも沈黙は緊張を煽るものじゃなくて・・・。
繋がれている手同様、意外と心地よかった。



「お邪魔、します」

有澤さんちには、過去何度か来たことあるけど、今夜はちょっと、ううん、かなり雰囲気、というより心構えが違うような気がする。

「なんか飲むかー」
「あ、ううん、いらない」
「じゃあおまえは何したい」
「えっ、と、じゃあ、お風呂入る・・・」
「あ、そ。んじゃ、湯沸かしてくる・・・」
「えっ!お風呂じゃなくって、シャワーでいい!」と慌てて言う私を、有澤さんは怪訝な顔で見た。

「だって、有澤さんも疲れてるのに、そんな手間かけさせるの、悪いし・・」
「分かった。じゃあ着替え持ってくる」

と言う有澤さんは、余裕がいーっぱい見受けられて・・・私は無知なお子様だと、つくづく思い知らされた。




普段はお風呂入るときにコンタクトを外すけど、今は有澤さんちだから、コンタクトをつけたまま、ざっとシャワーを浴びた。

・・・よく考えてみたら、有澤さんちに来て早々にシャワー浴びるとか・・・ものすごく大胆すぎじゃない!?
でも、もうシャワー浴びてるから、取り消しきかないし・・・。
私、誰かのおうちに泊まるのは、おばあちゃんちをのぞいたら、小学生の時以来だし!
しかも今回は有澤さんち。
有澤さんは友だちで、同期で、しかもすごくカッコいい、サル系の・・・男の人で。

つい私は力を込めて、体をガシガシとこすり洗いした。

あ、髪濡らさないようにしないと。
なぜか着替えと一緒に、コンビニで買ったと思われるシャンプーハットもくれた有澤さんって、やっぱりこういう状況に慣れてるんだよね・・・。
私は初めてで・・・しかも、誰ともつき合ったことなんてない。
いいのかな、ホントに。
私が、じゃなくって。
有澤さん、いいの?
私なんかで・・・いいの?

緊張と不安と期待と、切ない気持ちがゴチャゴチャと入り混じる中、私は半泣き状態で歯磨きを済ませると、おずおずとリビングへ行った。


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