倦怠期です!
「りょ、ごほっ、ごほっ!!」
「・・・あなた、またソファで寝たの?」
「おま、ねてぐぉほ!!」

帰りが午前様になったとき、夫はいつもソファで寝ている。
寝ている私を起こしたくないから、というのが理由らしいけど。

今月は、新年会やら接待やら部下との飲み会やらで、午前様帰宅が続いていた夫は、ついに風邪をひいてしまったようで。
朝からゴホゴホと咳をしっぱなしな上、元々低い声がガラガラになっていて、咳の合間に何か言ってる声は変わってるし、それ以前に声が出ないみたい。

「しゃべらないの。喉痛いんでしょ?」と私は言いながら、ゼーゼー言ってる夫の額に手を当てる。

この人、元々代謝がいいのか、冷え性な私とは対照的に、体はいっつも暖かいけど、おでこはいつもより熱い気がする。
それに熱がある人特有な、潤んだ目してるし。
・・・さっき咳ゴホゴホし過ぎて涙目になってる、っていうのもあるんだろうけど。
それを抜きにしても、ボーっとしてる感じだ。
だからソファ(ここ)で寝るなって言ってるのに。

「ぐ・・・りょ、りょう!」

ソファから上体を起こしている夫は、ありったけの力をふりしぼって息子を呼ぶと、私の肩あたりに顔を埋めてゼーゼー言っている。

あぁ。仁さん、かわいそうに・・・。
という思いがあったからか、私は無意識に夫の後頭部と背中を、子どもをあやすようによしよしと撫でていた。

5秒くらい経って、「なに」と言いながらお風呂場から出てきた息子の遼太郎は、身長180センチの我が夫・仁一郎より、5センチほど背が高い。
顔のつくりは、娘の日香里同様、どちらかと言うと夫に似ている。
と私は思うんだけど、日香里に関しては、私の方に似ていると言われることの方が多い。
男女の性別の違い?なのだろうか。

とにかく、今の遼太郎は、風邪をひいてボロボロな仁さんよりも、はるかに清々しいいでたちをしている。

「りょ、ごほっ・・はぁ、はぁ。りょ、う。オレの、かわり、ごほっ、でん、わ・・・」
「電話?どこに」
「やだね」
「ごほっ、そんなはくじょーなこと、言わんと、ごほごほっ」
「なんで俺が父さんの代わりに電話しないといけないんだよ」
「俺と声が似てるだごほっ、ごほごほっ」

ん?なんか、父と息子の間で話の内容はかみ合ってるようなんだけど、二人の間にいる私には、さっぱり内容が分からない。
一体どこに電話かけるの?
仁さんはどこに電話してほしいんだろう。

「はあ?父さんに成りすましてキャンセルの電話しろっての?余計やだ。今でも声出るんだから自分でかけなよ」

二人とも同じくらい背が高い上に、似たようなサル系のイケメンで、低い声もそっくりで、体型は・・・遼太郎の方が、仁さんよりヒョロッとした感じが少しだけ強いけど。

今の遼太郎の、妙にクール過ぎる言い方は、私そっくり。

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