倦怠期です!
「そんああぐをほーっ!!」
「ちょっとちょっと!あ、遼太郎?ちょっと待ちなさい」
私はむせてる夫をなだめつつ、息子を呼び止めると、遼太郎はピタッと止まって、私たちの方をふり向いた。
「なに?」
「お父さんと何の話してたの」
「それは・・・父さんに聞いてよ」と、遼太郎は少々気の毒そうな顔と声で私に言うと、「じゃーいってきまーす」と言って、玄関の方へ消えた。
その声は、さっきとはうって変わって、いつもどおり朗らかだった。
まぁ、推薦入試が終わって初めて迎える週末だから、開放的な気分になるのも無理ないか。
「りょー、まて・・・」
「もう行ったよ。ドアが閉まる音、聞こえたでしょ」
「うううぅ・・・・」
今の仁さん、すごく弱気に見えるから、唸り声が泣き声に聞こえる。
「ねぇ。遼太郎にどこに電話してほしかったの?」
「それは・・・ごほごほっ、今日出かけるとこ」
「あぁ」
今年は、私たちが入籍してから20年目を迎える、記念すべき年だ。
入籍したのは1月26日なので、本来ならその日に出かけることもできたんだけど、遼太郎の推薦入試が1月27日だったから、それが終わるまでは出かけても落ち着かない、と私たち二人とも意見が一致して。
それで翌週の、2月1日に出かけることになったのだ。
それを決めたのが年末あたりの話。
そして今日は2月1日。
つまり出かける日だった。
でも・・・仁さんがこの調子じゃあ、出かけるのは無理だよね。
「・・・すまん」
「いいって」
私は心の中で苦笑を浮かべつつ、今にも泣きそうな夫には、穏やかな笑みを浮かべた顔を見せた。
「・・・はい。そういうわけでして、申し訳ないのですが、今日の宿泊はキャンセルさせていただきたいと思いまして・・・・・・・・・あぁはい、それは・・・・・・え?ホントに?わぁ嬉しい。ありがとうございます・・・・・・・はい。ぜひ。それでは、失礼いたします」
夫のスマホを切った私は、ぐったりと椅子にもたれかかった。
そして顔を上げると、額に手を当てて、フーッと深いため息をひとつつく。
夫は、結婚20周年のサプライズプレゼント企画として、私には内緒で、熱海の旅館に1泊予約をしていた。
今日だけどこかへ出かけるものだとばかり思っていた私は、確かにビックリしたけど、ついさっき旅館へ泊まることになってたのを聞かされた上に、その宿泊キャンセルをしている自分が、ちょっと悲しかったりして・・・。
でもまあ、仕方ないよね。
仮に日香里か遼太郎を誘って一緒に行っても、仁さんいなかったら面白味が半減する。
それより、自分のことで忙しい子どもたちは、私が誘っても「わ~い!一緒に行く~!」なんて・・・言わないよね。
だったら熱出して寝込んでいる夫を家に置いたまま、一人で一泊旅行?
なんて論外でしょ!
ハハッと渇いた私の笑い声が、他に誰もいないダイニングにむなしく響く。
それから私は、両手で自分の顔を洗うように何度かこすって自分なりに気分を上げると、夫が寝込んでいる私たちの寝室へ行った。
「ちょっとちょっと!あ、遼太郎?ちょっと待ちなさい」
私はむせてる夫をなだめつつ、息子を呼び止めると、遼太郎はピタッと止まって、私たちの方をふり向いた。
「なに?」
「お父さんと何の話してたの」
「それは・・・父さんに聞いてよ」と、遼太郎は少々気の毒そうな顔と声で私に言うと、「じゃーいってきまーす」と言って、玄関の方へ消えた。
その声は、さっきとはうって変わって、いつもどおり朗らかだった。
まぁ、推薦入試が終わって初めて迎える週末だから、開放的な気分になるのも無理ないか。
「りょー、まて・・・」
「もう行ったよ。ドアが閉まる音、聞こえたでしょ」
「うううぅ・・・・」
今の仁さん、すごく弱気に見えるから、唸り声が泣き声に聞こえる。
「ねぇ。遼太郎にどこに電話してほしかったの?」
「それは・・・ごほごほっ、今日出かけるとこ」
「あぁ」
今年は、私たちが入籍してから20年目を迎える、記念すべき年だ。
入籍したのは1月26日なので、本来ならその日に出かけることもできたんだけど、遼太郎の推薦入試が1月27日だったから、それが終わるまでは出かけても落ち着かない、と私たち二人とも意見が一致して。
それで翌週の、2月1日に出かけることになったのだ。
それを決めたのが年末あたりの話。
そして今日は2月1日。
つまり出かける日だった。
でも・・・仁さんがこの調子じゃあ、出かけるのは無理だよね。
「・・・すまん」
「いいって」
私は心の中で苦笑を浮かべつつ、今にも泣きそうな夫には、穏やかな笑みを浮かべた顔を見せた。
「・・・はい。そういうわけでして、申し訳ないのですが、今日の宿泊はキャンセルさせていただきたいと思いまして・・・・・・・・・あぁはい、それは・・・・・・え?ホントに?わぁ嬉しい。ありがとうございます・・・・・・・はい。ぜひ。それでは、失礼いたします」
夫のスマホを切った私は、ぐったりと椅子にもたれかかった。
そして顔を上げると、額に手を当てて、フーッと深いため息をひとつつく。
夫は、結婚20周年のサプライズプレゼント企画として、私には内緒で、熱海の旅館に1泊予約をしていた。
今日だけどこかへ出かけるものだとばかり思っていた私は、確かにビックリしたけど、ついさっき旅館へ泊まることになってたのを聞かされた上に、その宿泊キャンセルをしている自分が、ちょっと悲しかったりして・・・。
でもまあ、仕方ないよね。
仮に日香里か遼太郎を誘って一緒に行っても、仁さんいなかったら面白味が半減する。
それより、自分のことで忙しい子どもたちは、私が誘っても「わ~い!一緒に行く~!」なんて・・・言わないよね。
だったら熱出して寝込んでいる夫を家に置いたまま、一人で一泊旅行?
なんて論外でしょ!
ハハッと渇いた私の笑い声が、他に誰もいないダイニングにむなしく響く。
それから私は、両手で自分の顔を洗うように何度かこすって自分なりに気分を上げると、夫が寝込んでいる私たちの寝室へ行った。