full of love~わが君の声、君の影~

メールはすぐに来た。
『・・無事に家に着きました・・』

それで終わりかと思いきや
お礼がしたいと言う。
期待はすまいと思っていたが後日本当に連絡がきた。


すぐに名前は出てこなかったけれど娘が好きなバンドのメンバーのひとりだとわかった。
芸能情報にすっかりうとくなっていた私でもHalcのことは知っていた。
3人組のロックバンドで最近1人抜けて2人になったとかで話題になっていた。
CDの売上もさることながらTVのトーク番組をもちバラエティにも引っ張りだこな今や国民的な芸能人(ひとたち)だ。

そのライブに招待とあれば飛びつかない人がいるだろうか
プラチナチケットだ。
娘の咲(さき)にも何度ねだられたことか。

でも・・本当に本人?
電話で話しているとパート先のバイト学生とたいして変わらない;

チケットが届いて初めて咲に話した。

「え~~?やだお母さんそれ新手の詐欺じゃない?」
「そんな・・お金なんて請求されてないよ?」
「後から請求されんだってば!!」
「ならチケット見てみてよ」

私は生まれてこのかたライブなんて行ったことがない。
娘の方が詳しい。

咲はチケットを穴があくほどガン見し、照明に当ててみたりしている;
「お札じゃないんだから・・」
「本物だよこれ!!えーーーウソぉウソでしょ!!」
急に立ち上がり小躍りし始める咲。

「しかもアリーナだよ!一番前だよ!信じらんない!!お母さんすごい!すごい!すごーーい!!」
「そっか~良かった本物で・・」
「ホントマジですごいよお母さん・・グスっ」
「え?」

咲の顔を見ると涙が光っている。
泣くほど嬉しいものなのか・・

一生分の運を使ってしまったのかもしれないなあ


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