full of love~わが君の声、君の影~

「お母さん!靴下どこ?」
「どの靴下よ?」
「黒のハイソックス!ワンポイントついてるヤツ」
「昨日洗って咲の部屋に置いたわよ」
「え・・・あ!あったあった」
「たくぅ」

「あれ?お母さんまた鉢植え買ったの?今度は何て花?」
制服のジャケットに腕を通しながらこちらにやってくる咲。
私は玄関の置いていた鉢を庭に運ぶ途中だった。

「えーっと・・何だっけ?」
「わからないで買ってんの?なんで急に花好きに・・?また枯らさないでよ!」
「はいはい;」

咲はリュックを背負いながら
「あー時間ない!お母さんお弁当・・あれ?お父さんまたいつの間にかいなくなってる;」
「そうだね・・」
「たくぅ大人のクセに行ってきますも言えないのかね~」
「はい(お弁当)」
「サンキュ。行ってきまーす」
「いってらっしゃい。気をつけてね」
「はーい」

高校生になって咲は生意気を言うようになった。
中学の時は急に私を遠ざけ始め、元々距離のあった主人とは更に離れるようになった。

咲の高校入学と同時に私はパートに行き始めたのだが、
そこでようやく今まで四六時中母のいる有難味がわかったのか
それとも私から距離を置いたのが良かったのか。


だから今の私は幸せだ。
毎日、娘の笑顔さえ見られればそれでいい。
何一つ不自由のない生活。


なのにどうしてだろう
彼と話すひとつひとつ一言一言がとても大事なステキなことに思えてくる。
友だちとも娘とも違う何か。

そうアボカドの芽が出てきたなんてことですら私には光って見えた。
なのに

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