full of love~わが君の声、君の影~
7.ほしいもの
―――「今1番欲しいものを言ってごらん」
小さい頃おもちゃ屋さんに連れて行ってくれた祖母に聞かれた
当時私は近所で生まれてまもない子猫数匹にこっそりエサをやっていた
「子ネコ」
と答えたかったが
生き物キライな親が当然許すはずはないし
おもちゃ屋さんには売っていない
答えに困り黙っていると
横から姉たちに「この子に聞いても無駄。自分が欲しいものが何かさえ知らないのよこの子は」
それから適当に姉たちに勧められたものを買ってもらった
今まで人生なんてこんなものと思っていた
普通の家庭で3姉妹の末っ子として生まれ育ちこれといった苦労もしてこなかった
生まれた時にはすでに何でもそろっていて
服もおもちゃも姉たちのおさがりで十分だった
何をするのでも姉たちの意見が先だったから
自分の意見を言う、まして欲しいものを口に出すことなんてありえなかった
でもそれが普通だったし楽でもあった
姉たちの後をついていき姉たちの様にふるまい姉たちの選んだ学校と同じ学校に通った
まさかこんなに早く結婚し母になるとは思ってもなかったが
それでも唯一自分で選んだ好きな人と可愛い子どもと一緒にいられることは幸せなことだと思っていた