full of love~わが君の声、君の影~

ばーちゃんが言うには
俺は小さいころから寂しがり屋だったらしい。

なかなか早く帰れない両親を恋しがっては泣いていたらしい。

でも俺は覚えていない。

覚えている俺はばーちゃんもじーちゃんもいたから
寂しくなんかなかったはずだ。


あの時
大好きだったばーちゃんが死んだ時
あの時は確かに寂しいと思った
独りじゃないはずなのに
独りにされたような寂しさにおそわれた

その寂しさは俺の中に大きな穴のように居座っていた

バンドにのめり込むと
その穴は見えなくなったような気がした

周りにたくさん人が集まると
もっとその穴は見えなくなった

そのたくさんの人が増えれば増えるほど穴はふさがっていく気がした

だけど

ステージを降りると
独りになると
またその穴は姿を現す

その穴は大きくふくらみ
俺は何度も呑みこまれそうになった

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