full of love~わが君の声、君の影~

今彼が泣いている
どうしてなのかはわからない


最初は囁くようなキスだった。
少しづつ私という女を確かめられているようで何処を見たらいいのかわからず
目を閉じた。

だけどそのキスが私の唇を離れ、首筋にすべりこんだ途端
私は思わず声を上げた。
彼の身体がびくりと反応するのがわかった。

(これがさっき言ってたこと・・?)

「大丈夫?」
動きを止めうつむいた彼の顔をのぞきこむ。
目が合う。

と次の瞬間彼が私を強く抱きすくめた。
するとさっきとはうって変わって息も出来ない程のキスをされる。
私の身体の中の奥底から熱があふれ出す。

ニットを脱がされ私の胸に顔をうずめる彼を
この腕で抱きしめながら

“ああ私は今彼に愛されているんだ”

と思った。

そして私がずっと欲していモノはこれだったんだと。

だから口にした。愛しくて愛しくてたまらないそのモノの名を。

「はるき・・」と。


< 162 / 308 >

この作品をシェア

pagetop