full of love~わが君の声、君の影~

朝、独身の時はマネージャーに、結婚してからは今日子さんに起こされないと起きなかった俺が
毎朝7時に起きて朝食を作り、さくらをたたき起こして学校へ送り出している
前の日がどんなに遅くてもだ
「人って変わるのね~」うちの母親評だ

今ではすっかり2人の生活が板についているが
今日子さんが亡くなってすぐにはそりゃあ大変だった
仕事の予定はすぐには変えられず
さくらはほとんど親に預けっぱなしだった


1年経って仕事の量も調整してもらえようやくさくらと2人の生活がまわりだした
それでも周りに助けられっぱなしだったけど;

病気もよくした
熱の高い夜は不安で眠ることができないほどだった
今日子さんがいてくれたらとどんなに願ったことか


それが今では健康優良児。ほとんど休むことなく勝手に学校に行って勝手に帰ってくる
それだけでなんとありがたいことか
学校では少しずつながらも友だちが増えているようだ

それでも個人面談では先生に「自分からお友達に声をかけれない」だの「授業中手を挙げた試しがない」だの「始終ボーっとしている」だの言われると自分のことの様に凹む
その上成績も芳しくない

塾に行かせてみたがすぐに行かなくなり
いろいろな習い事もさせてみたが続かない
音楽的才能の片鱗もみられない


だがそんなさくらでも得意なものがある
それは料理だ
今では今日子さんが咲ちゃんにと書きためておいたレシピノートを頼りに我が家の夕飯は9歳にしてさくら一人の担当となっている
今日子さんはさくらが2歳から子ども用のナイフを持たせてきゅうりやソーセージを切らせていた
小さなエプロンを買ってやった時のさくらの喜びっぷりが忘れられない。

幼いころに母に死なれたさくらにとって料理は唯一つながっていられる母親の記憶かもしれない

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