full of love~わが君の声、君の影~

「じゃあ・・今日は久しぶりにおとうさんが夕飯つくるか!」
「ホントに?やったあ!」
さっきまでブスッとしてたくせに途端に笑顔になる
わかりやすい
「何がいい?」
「おとうさんのオムライス!」
「“おとうさんの・・”って・・ホントそれでいいのか?;」

さくらは小さいころからオムライスが大好きで
今日子さんがよく作ってやっていた

でも今日子さんが亡くなって
作ってくれる人がいなくなった

それでも食べたいと泣くさくらに俺が作ってやったのが
自分で言うのも恥ずかしいが“おとうさんの”オムライス。

だいたい食べたい!と言いだしたタイミングが悪かった


朝、しかも保育園に行く直前。
そうでなくても当時さくらは保育園に行きたがらなかった
行ってくれないと俺は仕事に行けない;
さくらの機嫌を取るために作ることにした
しかし時間も材料もない作り方も知らない

よって出来た俺流オムライスは・・

「うん!これこれ♪おいしー!」
さくらがパクパクと良く食べる

初めて食べた時は『おかあしゃんのじゃない!』って泣いたクセにな・・

なのにまた食べたいと言っては作ってやった
クセになる味なのか・・?
この“白飯に薄焼玉子のせてケチャップかけただけのもの”が;

久しぶりに俺も食べてみる
「う。」
白飯に薄焼玉子のせてケチャップかけただけの味しかしねえ;



横からのぞいていた今日子さんがぽつりと言う
『いいなあ~私も食べてみたかったなあ』
「う」

そういうこと言われると泣きそうになるからやめてくれ;


< 223 / 308 >

この作品をシェア

pagetop