full of love~わが君の声、君の影~
そんな何気ない話が途切れたとき、彼女がふと真剣な面持ちになる。
「田中さんは、奥様に・・幽霊でもいいから会ってみたいと思ったことありませんか?」
「え?」
スミマセン・・今リアルに会ってます・・
「そ、そうですねぇ;・・鈴木さんはどうなんですか?」
「あります」
急にまじめな顔になる
「だから私・・幽霊のことを本で調べたことがあるんです」
「へえ・・」
彼女は勉強の成果を教えてくれる
「人の魂が成仏せずにこの世に残ったものが幽霊になるわけなんですが・・」
「うんうん」
「それには2つタイプがあって・・
この世やこの世の人に恨みとか妬みとか悲しみとか持っていて、それらがものすごーく強い人が未練を捨て切れず幽霊となるタイプ」
「恨みとか・・悲しみ・・」
今日子さんのことを想った
加害者への恨みはもうほとんどない
悲しみは・・どうなんだろう・・?
「それともうひとつは・・」
と彼女が目をふせる
「もうひとつは・・残された人の悲しみに引っ張られて成仏できないタイプ」
「あ・・・」
「よく周りに“そんなに泣いてばかりいると彼が成仏できないよ”って言われるんですが・・きっとそういうことなんですね。それを知って私もうクヨクヨ主人のコト考えるのやめようと思ったんです・・だって私のせいで成仏できずにさまよっていたんじゃ可哀そうじゃあないですか? もしそれが私だったらって・・想像してもそれはとても悲しくて怖いことのように思えたんです」
そういえば今日子さんが
――『さくらが泣いていても何もできなくて辛かった・・晴喜くんにもね・・』
と言っていた
今日子さんは俺の悲しみに引っ張られてココにいる?