full of love~わが君の声、君の影~

―――【神島眞一初のソロライブ公演】横浜最終日

今日は前の仕事が押して入りが遅くなってしまった
アリーナの裏口。ここは駐車場が外だからか入り待ちのファンが多い
「きゃー神―!」という黄色い声
いつも通りサングラスをかけ適当に手を振って足早に会場入りする
こういう時クールなキャラを装ってきたので楽だ

今日はその黄色い声の中に変わった声がまざっていた
「神島さーん!高木です!高木咲です!母のことでお話が!お願い!神島さん!」
振り向くと見た顔がいる
視力に自信がないのでその顔をよく見ようと近づいた
「きゃあーー!」
ファンの子たちの声が絶叫に変わる

派手に装ったファンの子たちの中で逆に目立ってシンプルな明るい茶のロングコートを着た少女がいた
柵越しに俺に声をかけられ安堵にも似た笑顔がひろがる
「お願いします!晴喜さんに渡してもらいたいものが・・」
周りの子たちの声がかぶさり何を言っているか聞きとれない

「そっち回って中へ」
俺は指で指示をしながら柵の切れ目へ歩いて行く
柵の向こうも集団でついてくる;

警備員に「知り合いなので」と声をかけ彼女の手を取り中へ引き入れた
つんざくような絶叫を無視し後は警備員に任せ
そのまま彼女の手をひき会場へ入った

「こ、こんなことして大丈夫なんですか・・?」
後ろを何度も振り返りながら彼女は心配そうに聞いてくる
「気にしなくていいよ」
確かにネットに何を書かれるかわかったものではないが
別に後ろめたい関係でもないし

< 265 / 308 >

この作品をシェア

pagetop