full of love~わが君の声、君の影~

急いで戻ると
彼女はさっきのまま自分の膝を抱えて小さくなっていた
俺は彼女に手を差し出し
「帰ろう」とだけ言った

「待って・・」
「どうした?」
俺はあらためて彼女の前にかがんだ
「上書きして・・」
「?何?」
「上書きしてください・・さっきあの人に・・キス・・されたんです・・このままじゃ帰れない」
また血が昇る
(もう2,3発殴っておくんだった!)

また彼女がしゃくりあげる
「まさか・・初めてだったのか・・?」
コクンとうなずく彼女
体が熱くなる

「お願い・・」
うつむいたまま腕をつかむ彼女の手に力が入る
彼女にそんなことを頼まれて断れる男はいない
「わかった」

俺は彼女の細いあごに手をかけて上を向かせる
彼女の目は涙でよりいっそうキレイだ
彼女に唇を合わせる

ただそれだけ

もう1度彼女を抱きしめる
さっきより少し強めに

彼女が俺の胸に顔をうづめたまま言う
「私・・神島さんが好きです・・ずっと好きでした・・」
ああ言わせてしまった
心のどこかで予期していた

そんな自分を苦々しく思う

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