full of love~わが君の声、君の影~
そう俺は今日子さんに恋してる。
声だけじゃない
それだけははっきりと自覚した。
最初は年上でテキパキとした大人な女性への憧れにすぎないかと思っていた。
好みのタイプではないし、好きになる対象でもない。
そう思って認めようとしなかった。
彼女にとっては出来の悪い息子くらいにしか見えてないのだろうな・・
看病に来た彼女はまんまお母さん。
ベッドに押し倒してもまるでいたずらをした子どもをあやしているようだった。
でも
その瞳はゆれていた。
その後もちゃかすようにごまかしているように見えた。
無理に明るくふるまっていたようにも見えた。
その後俺のしたことはまるでなかったことの様にスルーされた。
今はそれで良かったと思っている。
相手の声に動揺して逃げていた頃の俺は自分のことしか考えてなかった。
逃げた俺に置いていかれた彼女たちの気持ちなんてまるで考えたことがなかった。
今はその気持ちを思うと胸が痛い。
そんな勝手な俺が今は何より彼女の幸せを願う。
「大丈夫」の言葉の下で彼女がひとりで泣いていないか
彼女の声に耳をすまし続ける。
今はそれしかできない
はがゆい
正直切ない
でも
少しずつだが確実にその距離は近づいている。
それは声を聞けばわかる。
だからふいに手を伸ばしたくなる。
それでも触れられそうで触れられない。