full of love~わが君の声、君の影~
「ごめん・・咲が携帯洗濯しちゃって」
「は?」
「正確に言うと携帯をポケットに入れたままのエプロンを洗濯しちゃったんだけどね」
「はあ」
「すぐに新しいの買いに行きたかったけど仕事が忙しくて・・ほらまだ小学校とか冬休みだからお休みのパートさんが多くて・・さっきねやっと買えたの」
「・・・」
「それで新しい携帯を開いてみたら・・ふふふ」
「・・・そうだったんだ」
はああ完全に気が抜けた。
神の言う通り待てば良かった。
「もしもし?ごめんね。そんなに心配してくれるなんて思わなかったよ・・ところで最初の電話の用事は何?」
「ああそれは・・」
とうなだれた頭をあげると
「あ」
辺りはだいぶ暗くなっていたが
俺は視力はいい。
携帯を片手に自転車を押す今日子さんを見つけた。
慌てて車を降り歩道へ飛び出す。
「今日子さん!」必死で声を出した。
「え!?」
今日子さんがこちらへ自転車をがちゃがちゃいわせながら、小走りで近づいてくる。
携帯から「何でいるの~?」の声。
かなりビックリ顔だ。
でもそれ以上に・・
ぷ。
わっははははははははは
俺は爆笑してしまった。
「え?」呆気にとられる彼女。
一通り笑わせてもらってから
「だって、だってさ、変わらないなーと思って」
彼女の恰好は出会った時のまま、メガネにニット帽にマフラーぐるぐる巻きにカーキ色のミニタリーコート
全く同じだったのだ。