full of love~わが君の声、君の影~

学生の頃バス通学の途中で腹痛に襲われたことがある。
急がなければならないのにたまらず普段は通り過ぎるだけの知らないバス停で降りた。
ちょうど目の前にコンビニがあった。

今思うとかなり自分は滑稽な体勢だったと思う。

だがそこではお手洗いの貸し出しは行っておらず
マニュアル通りに断られた。


並びに他の店は見当たらず裏に回ると「○△ガス」の営業所がありそこへ駆け込んだ。

まだ朝早く開店もしていなかったにも関わらず
営業所兼自宅の所長さんの計らいで従業員用のお手洗いを貸していただいた。

その後病院にまで連れて行ってもらった。
結局はお腹の風邪であろうということで大したことにはならなかったのだが

田舎を出て学生で独り暮らしを始めたばかりの自分にとって
今でも忘れられない他人(ひと)の優しさだった。


もちろん後日菓子折りを持ってお礼に行った。
けれどそれっきり

恩返ししたいけどどうしたらいいかわからない

当時まだ健在だった父にそんな話をしたら


「いつか自分と同じように困ってる人がいたら助けてあげるといい
それが1番の恩返しだよ」

< 98 / 308 >

この作品をシェア

pagetop