12番目の部屋

「でも、今ので俺はもう充分だよ。花池」

大地は笑顔で言う。


ドクン。胸の奥に痛みを感じた。

ーー嘘。どうして。

途端に涙が溢れ出す。
壊れたかのように流れ出す涙は止まる気配がない。

「いや……いや……」

手で顔を覆ったまま、栞は泣き続ける。


冷気が消え、ふわりと温もりに包まれる。
大地が抱きしめてくれていた。

「花池。よく聞いて」

「俺はね、お前に出会えて幸せだったよ。お前に好きだって言われて、ほんと幸せ者だな」

ははっと照れながら笑う大地がすぐ近くにいる。

「俺は嘉夏を殺した。みんなも殺した。俺はここに残る必要はないんだ。花池、お前に生きていてほしい。頼む、俺の勝手なわがままを許してくれ」


先ほどまでの温もりが消え、栞ははっと顔を上げる。

「春木君!」

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