ブランコ。
あてどなくウロウロと車を走らせる。

十分もたった頃だろうか、リエは口を開いて話し始めた。

「あのね・・・。山岸さん、最初は優しかったんだ」

それはそうだろう。

山岸はリエのことが好きだから。

僕はそう思ったが、口を挟まずただ頷いた。

「でもね、去年、フロアの模様替えをしたでしょ? それで、わたしと高梨くんの席が近くなって・・・」

「仲が良いって勘違いしたわけか」

リエの表情に一瞬だけ明るさが戻り、そして次の瞬間には、また暗い表情へ帰っていった。

「・・・勘違い・・・じゃないと思うけどなあ・・・」

「ん? 何?」

僕は目の前の車に気を取られて、リエが小声で囁いた言葉が聞き取れなかった。
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