ブランコ。

 僕は何も言えず、ただじっと
 雑誌の記事を見ていた。
 先輩はニコニコしている。
 美穂さんは更にイライラして
 いる。



「え〜っと・・・」



 僕は堪りかねて声を上げた。
 先輩は相変わらずニコニコし
 ている。
 美穂さんの切れ長の目が、も
 っと吊り上った気がした。



「高梨君、一緒に行きましょ〜」

僕は美穂さんの方をチラっと見た。

ものすごい顔で睨んでる。

とても断れる雰囲気ではない。

「いいですよ」

僕は声に「仕方がない」という感じが出ないように努力してそう言った。

美穂さんの方を見ると、満足したように組んでいた腕を下ろし、口の端を上げてニヤリと笑っていた。

すごく恐かった。
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