ブランコ。
「千秋。化粧直し」

「うん」

美穂さんがそういうと、先輩はちょっとだけフラフラしながら、トイレへ向かった。

美穂さんは先輩が座っていた椅子に座り、旅行雑誌をぺらぺらとめくりながらこう言った。



「百回は聞いた」

「百回?」

「もう聞き飽きた」

「聞き飽きた?」

「練習台だったの」

「練習台?」

「そう。だから通訳できた」

「なるほど・・・」

「あなた、高梨君・・・」

美穂さんはそこまで言うと、僕の顔をじっと見つめる。

そして、しばらく見つめた後、ふーっとため息をついてこう言った。

「まあ、人それぞれだね」

「えっと・・・どういう意味でしょうか?」

「そういう意味よ」

「顔の造形という意味でしたら、ただ謝るしかないんですけど」

「馬鹿じゃないの?」

「・・・・・・」
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