ブランコ。

僕は黙ってハンドルを握っている。

美穂さんの言わんとすることが、よく分からなかった。


「高梨君、あなた、意外に人気あるの知ってた?」

「そうなんですか」


僕はどうやらそうらしい。

ここは小躍りして喜ぶフリをするべきなのか、赤面して質問を矢継ぎ早にすべきなのか、どちらがかわいい後輩として映るのか僕は決めかねていた。


「ねえ、いつもそんなにクールなの?」

「クール? 自分ではそう思ったことはありません」

「そう……」

「はい」

「ねえ、高梨君……あなた、千秋のこと……どう思ってるの?」

「どう? と言われましても……すごく綺麗な人だと思いますよ」

「それだけ?」

「優しいですよね。でも、そんなことは、先輩の方がご存知なんじゃないですか?」

「ふ〜ん……」


そう言うと、美穂さんはそれきり話さなくなった。

頬杖をつき、カーステレオから流れる音楽に合わせて指でトントンとリズムをとりながら、時折、髪の毛をかきあげ、反対車線を行く車を退屈そうに見ていた。
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