ブランコ。

残業をするフリをしていた僕の携帯電話が振動する。

机の下で隠しながら確認すると、リエからの『準備ＯＫ！』というメールだった。

僕は『了解』と打ち返そうとした思い、携帯電話を操作する。

その時、ふいに肩を叩かれた僕は、思わず携帯電話を落としてしまった。

「ん？　ああ、驚かせてごめんな」

声の主はリエの所属する社内システム課の小川課長だった。

眼鏡を掛け、いつもショボショボとした目をしている。

身長はそれほど高くなく、いかにも中年というような、下腹部の迫り出しが目立つ。

それよりも、引き裂かれたような、爪あとのような、無理矢理撫でつけられた悲惨な頭髪の方が目立った。