ブランコ。
キュッキュッっと、リノリウム特有の音が微かにする。

相手も気配を消そうとしているのだろう。

次第に掌が汗ばんでいくのが分かる。

さっきから背中にも、幾筋もの汗が伝っていっている。

空調の無い狭い室内ということもあり、普段、汗をあまりかかない僕でも、額にうっすらと汗をかいているのが自分でもわかる。

ドク、ドク、ドク・・・と、自分の鼓動が聞こえてくる。

頭がゆるい圧力で、鼓動のリズムに合わせて締め付けられる。

耳も熱くなってきた。

その時だった。

ブンッと空気が大きく動き、僕の目の前の暗闇が質の違うものに変わった。

誰かがドアを開けたのだ。
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