ブランコ。
「ねえ、ヒマなんでしょ?」
「君にヒマだと決め付けられる筋合いはない」
「ほら、誰だか分かってるじゃない」
「……チッ……何?」
「何って冷たいなあ〜。私がせっかく遊びに誘ってやってんのに!」
僕は相手に聞こえないように「はあ」とため息をつき、受話器を持つ手を握り替えた。
電話の相手は同期入社の女の子で、名前は境リエ。
入社時の研修期間から、妙に突っかかってきたり、ちょっかいを出してきたその女の子のことを、僕は好きでもなく、キライでもなく、ただの同期だというよしみだけでされるがままに放置していた。