ブランコ。
「こんにちは……」


僕は玄関のガラス戸を引き、中を恐る恐る覗いた。


中には眠ったようなおばあさんがひとりいるはずだ。


この前来たとき、リエがそのおばあさんを起こし(いや、本当は最初から起きてたと思うが)、何やら楽しげに話していたのを思い出した。


「おや? 今日はひとりかい?」


「えっ!」


このおばあさんは覚えていたのだろうか?


でも、僕は、ここへは一度しか来たことがない。


「と、言えば親近感が湧くだろ?青年」


「……はあ」


このおばあさんが商売上手なのか、正直者なのか、僕には判断がつかなかった。


「嘘だよ。あれだろ? あんた、ボインちゃんと来た子だろ?」


「ボ、ボインちゃん……」
< 205 / 260 >

この作品をシェア

pagetop