ブランコ。
僕がコンビニの駐車場に車を止めると、リエは走ってきて助手席に飛び乗った。
慣れた手つきでシートベルトを装着しながら、「おいッス」と小さな声で口を尖らせながら囁いた。
いつもならここで、小言を爆弾のように浴びせてくるのだが、外が暑かったせいか、今日の爆撃はまだのようだ。
「めんたいこ」
「は? めんたいこ?」
「いや、パスタ……」
「ああ、パスタね……」
リエはそう言うと、フロントガラス越しの夏の日差しを眩しそうに見上げた。
てっきり悪気ない小言が降ってくるだろうと、先手を打ってパスタのことを切り出した僕は、なんだか自分が、とてもいじきたない人間になったように思えた。