ブランコ。
「こんにちは」


「こんにちは。高梨君もサボリ?」


「ええ、まあ」


「二人してサボって、悪い人たちね」


「ははは……。すみません……」


「ああ、そうだ!リエは詳しく話してくれないんだけど……。最近、高梨君には助けて貰ったんだってね。ありがとう」


「いえ……」


リエは家族にも歯ブラシの件は話してないようだ。


いや、家族だからこそ話してないのかもしれない。


僕がリエの親だとして考えてみる。


確かに、そういう人間のいる、しかもそれが直属の上司だったという、そんな会社に娘を勤めさせたくないと思うのかも知れない。


いや、きっと思ってしまうだろう。


僕は目の前のお母さんの顔が悲しみにゆがまないで良かったと心の底から思うと同時に、なぜだかすごい重責を果たしたような、誇らしい気持ちになってる自分に驚いていた。
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