ブランコ。
「ちょっとタバコ吸ってきます」


僕は他のタバコを吸わない三人に声をかけ、人気の無い堤防のほうへと歩いていった。


ここからだと下を行き交う人々がよく見える。


この場所も花火を打ち上げ始めればたくさんの人で溢れてしまうんだろう。


僕はそう思いながら、まだ暖かいコンクリートの堤防に腰掛けた。





川からあがってくる風に頬を撫でられながら、僕は上空を見上げる。


雲も少なく、その雲もゆるやかに流れている。


花火は煙が残ってしまう無風状態より、流し去ってくれる微風の時の方が綺麗だ。


今日の花火大会はすばらしいものになるだろう。


だけど、僕の記憶には花火の綺麗さはきっと残らない。


なぜなら、もうすでに先輩の浴衣姿の美しさが、僕の網膜いっぱいに焼きついているから。
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