ブランコ。
「高梨君!」
声の方向を見ると、先輩がその華奢な腕を伸ばしている。
白く細い腕。
浴衣の袂から綺麗な脇と下着がちらりと見える。
僕も腕を伸ばす。
人前で手を繋ぐという行為はちょっと恥ずかしかったし、もし手を繋いだとしても先輩が僕を先輩のほうへ引っ張ることは無理だと思ったが、その時はそうするべきだと感じていた。
(もう……少し……あと……もう少し!)
少しずつ僕と先輩の手は近づいていく。
もう、ほんの僅かで届く。
僕は隣を歩くおばさんに悪態をつかれながら、腕に誰かのたこ焼きソースをつけられながら、構わずに手を伸ばす。
先輩も同じように伸ばしているが、何度も誰かに跳ね飛ばされた白い腕が、人の波の中を消えたり現れたりしていた。
その姿は、昔、映画で見た、豪華客船が沈み、海に投げ出されて漂流し、力尽きて海に沈んで行く佳人の姿と重なり、なぜだか僕はちょっぴり悲しい気持ちになった。
声の方向を見ると、先輩がその華奢な腕を伸ばしている。
白く細い腕。
浴衣の袂から綺麗な脇と下着がちらりと見える。
僕も腕を伸ばす。
人前で手を繋ぐという行為はちょっと恥ずかしかったし、もし手を繋いだとしても先輩が僕を先輩のほうへ引っ張ることは無理だと思ったが、その時はそうするべきだと感じていた。
(もう……少し……あと……もう少し!)
少しずつ僕と先輩の手は近づいていく。
もう、ほんの僅かで届く。
僕は隣を歩くおばさんに悪態をつかれながら、腕に誰かのたこ焼きソースをつけられながら、構わずに手を伸ばす。
先輩も同じように伸ばしているが、何度も誰かに跳ね飛ばされた白い腕が、人の波の中を消えたり現れたりしていた。
その姿は、昔、映画で見た、豪華客船が沈み、海に投げ出されて漂流し、力尽きて海に沈んで行く佳人の姿と重なり、なぜだか僕はちょっぴり悲しい気持ちになった。