ブランコ。


「行ってない」

「そうなの?」

「うん、そう。帰ってTV見てた」

「ひとりで?」

「いや、一人じゃない」

「……そう」


リエはそう言ったきり、黙り込んでしまった。

やっぱりおかしい。

いつもだったら、「ひとりで?」と聞く前に「ひとりでTV? 寂しくない?」なんて、軽口を叩きながらバカにされるのだが。


「父さんと」

「え?」

「いや、だから、父さんとTV見てた。ウチで」

「あははは。そうなんだ!」


リエは笑いながらそう言った。

僕は何か言い返そうと思ったが、リエの表情を見てやめた。

リエの表情が、すごく嬉しそうだったからだ。
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