ブランコ。


「冷めたのがお好きですか?」

「え?」

「いや、パスタ」

「そういうわけじゃないけど……」

「いや、わかってるけど」

「…………」



リエはさっきから、ぼーっとした表情で、俯き加減に、フォークでパスタをもてあそんでる。

クルクルと巻いたかと思うと、皿に戻す。

さっきからそればかりを繰り返している。



「どうしたの? ……って聞くべきか?」

「どうしたの? ……って聞くべきよ」

「じゃあ、『どうしたの?』」

「『じゃあ』はいらない」

「『じゃあ』はいらない?」

「うん……」

「うん……」



彼女は俯きながら、ペスカトーレの皿の上に乗った、焦げすぎたムール貝をフォークで転がしている。

そして、それきり顔をあげようとはしなかった。

それきりパスタを食べようともしなかった。
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